廃墟に化物は憑き物だ

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「な…なん、だ…あれ……?」 裕司の震える声が、暗い静寂の中に虚しく吸い込まれる。 血に塗れた身体。機能をほとんど失った服。血より濃い赤で血走った目。喰い千切られたのかのような断面を覗かせて、失くなっている両足。そして、長い牙。 【なんでや……速すぎる…!なんで食人鬼がここにおるんや……!?これを阻止する為に俺がおるのに…!そこで阻止出来るならやってみろって嘲笑っとんのか、このけたくそ悪い引き籠りめ…!】 雨が意味の分からない事を苦しそうな顔をして呟く。 【ウヴヴゥゥゥ……ア"ア"ア"ア"アアアァァァ!!】 唸り声を上げたかと思ったら、奇声を上げて襲いかかって来た。両足が無い事など気にも止めず、そもそも痛みがないのか、そんな事どうでもいいくらいの跳躍力で飛びかかって来る。 「う、うわああああああ!」 叫びながら咄嗟にポケットに入れておいた護符を、化物に投げつける。 「け、結っ!!」 【があァァァァァァッッ!?】 視えない壁、結界に弾かれた化物が後方に吹っ飛ばされる。自作の護符で効くか不安だったけど、効いて良かった。
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