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プロローグ
某日、某国にて
「で、また俺のお世話係は変わるわけね。今度はどれくらい持つかな。」
今年で15歳になる少年だった。黒の少し癖のある髪をしている。それといって特徴のない顔をしており、”冴えない”という言葉がちょうどいい。
スキアー・ブライトクロイツ
この国の第三王子である。特に何の権力もないお飾りだ。本人はそれを理解しており、何をやっても無駄だと考え、何をやるのにもおざなりにやっていた結果、何も出来なくなっていた。心配をした第一王子は様々な教育係を雇うが次々と匙を投げ、今度来る教育係で34人目となる。
「今度はおそらく持つと思いますよ?侍従長が手塩にかけて育てた方らしいですしね。」
「ふーん。別に俺はリーゼが身の回りの世話してくれりゃあそれでいいんだけどね。」
リーゼと呼ばれたメイドは本来第四王子の教育係なのだが、新しい彼の教育係が来るまで彼の世話をしている。
「そろそろ来るかな。新しい奴。」
彼の心は期待と不安でごちゃごちゃしていた。
「スキアー様。新しい教育係をお連れしました。」
「入っていいよ。」
エンゲルベルト・ハインミュラー侍従長がドア外から声をかけた。何考えてるか、そもそも何歳なのか何もかも分からないから、侍従長が苦手なのは彼の密かな秘密だ。
ドアが開き、侍従長ともう1人後ろからついてきたのは彼と年がそこまで変わらなさそうな少年だった。その少年は彼の前で肩膝をついて跪いた。
そして
「新しく副侍従長とスキアー様の教育係に任命されました、アラン・ハインミュラーと申します。あなたに命を捧げ、忠誠を誓います。」
と言い放った。
こんなことは誰でも言える、33人も教育係に、見捨てられた彼は人を信用できなくなっていた。気になることが2つほどあった。
「エンゲルベルトと同じ、ハインミュラー姓だけど、関係は?」
「私はエンゲルベルトの養子です。」
「アラン、君は今年で何歳になる?」
「今年で17になります。」
若すぎだ。
彼は侍従長に失望した。副侍従長にこんなに若い人を任命したのにも、自分の教育係にしたのにも。
「エンゲルベルト、侍従長の君まで俺を見捨てたんだね。君は政治を司る第一王子の補佐。軍事を司る第二王子には大将軍が、第一王子に次ぐ素質がある第四王子にはあのリーゼがついている。なのに俺にはほぼほぼ同い年でよくわかんないのをつけるわけ?」
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