彼女の嘘と俺の嘘

【１】出会い

あの頃は理由なんてどうでもよかった。

とにかく嘘をついて、嘘で自分を塗り固めても罪の意識なんてこれっぽっちもなかった。

塗り固めたどす黒い嘘はおれの顔を影のように真っ黒にして正体を隠し、ネットの中で都合良く成長させていく。

相手に情報さえ与えなければバレることはない。

人間は悪人になろうとすればすぐになれる。

けれど善人に戻るには２倍、３倍の時間と労力がかかる。

そんなこと……早く誰かが教えてくれたらよかったのに……。

少し前までおれは純粋な心を持っていた……と思う。