3人が本棚に入れています
本棚に追加
「でもさあ、僕行く宛が無いんだよ」
「それで女の子の部屋に転がりこむなんてのは言語道断ですし、行く宛が無いからって図々しいです」
「えー」
「えーじゃない」
どうしても住みたい魔王。
どうしても住まわせたくない光。
両者の意見は折れることがなく、にらみ合いが続いた。
しかし、その均衡が魔王によって破られた。
「わかったよ…いいよ、他当たるから」
「その拗ねた喋り方やめてもらえませんか、なんか私が悪いみたいじゃないですか」
「へいへい」
口をつきだしながら言う魔王に呆れる光。
「どこか行く宛あるんですか」
「勿論、無いです。だから住まわせてくださ」
「そうはならないです」
「わかってますよ。悪かったね。それじゃあ」
そう言って魔王は光に背を向けると腕を体の前につきだし、スッと縦に振り下ろすと空中に線が入った。
するとその線が空間をこじ開けるように左右に広がる。
その中に見える空間は黒一色で塗り潰されていて、まるで目の前に真っ黒な布のようなものが浮いているように見えた。
最初のコメントを投稿しよう!