3人が本棚に入れています
本棚に追加
あ、その前にと魔王はどこからともなく短剣を取りだした。
「何か怪しいことしたらそれで僕を刺してもらっても構わないから」と光に手渡す。
「え…」
もらった短剣は両サイドが刃状のもので、人を刺させばなんとか体を貫通するほどの長さ。
しかし思っているより軽いな、と光は思った。
自炊生活で毎日包丁を持つからわかる。
軽すぎる。
まるでプラスチックで出来ているような…
…………。
まさかと思い、短剣の先端を軽く押していくと柄の中にスルスル刀身が収まっていく。
「…オモチャの剣じゃないですか、これ」
「…オモチャの剣です、それ」
「なんの保険にもなってないじゃないですか!」
「だって、刺さったら痛いじゃないですか。…死なないけどさ」
「何ボソッと言ってるんですか」
「いえ、なにも」
「ウソつけっ!」
怒鳴って自称魔王にオモチャの短剣を投げつける。
はあとため息をつくと、またどこからともなく短剣を取りだして光に手渡した。
「今度のは間違いなく本物、もといモノホンです」
「言い直さなくても本物って分かります」
受け取った短剣は先程の短剣とは違い、独特の重みと月明かりに照らされた刃が本物である証拠に見えた。
最初のコメントを投稿しよう!