第1章

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先生は、私といてドキドキしたりするのかな。 青になったのを確認して、車を走らせ始めた先生の横顔をじ、と見る。 ちょっとした刺激で簡単に狂う、自分の心臓に手を当ててふと、そう思った。 いつも飄々としていて、涼しげで冷静。 女性の扱いに慣れてるから? ………ダメだ。 自分の思考にダメージを受けて、視線を下げるとサンダルが目に入った。 すみれちゃんのヒール………きれいだったな。 キラキラとした輝きが、悠花さんのオーラと重なる。 「下ばっか向いてると、酔うヨ」 「………」 悠花さんも、酔うの? 黒い感情がジクジクとわき上がる。 先生の言葉を素直に受け取れず、無言で顔を上げた。 「怒ってんノ?」    「………怒ってません」 「じゃ、スネてんだ」 「スネてませんっ!」 「ハイハイ」 っふ、と鼻で笑う先生に悔しいような、悲しいような気持ちに支配されて、泣きそうになる。 「……はぁー」 無言の私に、先生の口から長いため息が吐き出された。 その気配にぎゅ、と身が縮む。 ーーー怒らせた。 いよいよ視界が潤みそうで、ぎゅっと唇を噛む。
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