第1章

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「………ナンデモない」 首を傾げた私に先生は頭をポンポン、して前を向いた。 ………あ。 いつの間にか消えていたさっきまでのモヤモヤ。 サラリと空気が変わっていた。 先生の表情から探ろうとするけれど、何も見つからなくて。 きっと………私はずっと、先生にはかなわないんだと思う。 私が思っているよりずっと、大きな人。 うまく表現できない甘酸っぱい気持ちで先生の横顔を見つめる。 その時、カーステレオから聞き覚えのある曲が流れてきた。 「あ……『wait for me』……」 「ヘェ、知ってんだ。シブいね」 「はい……」 切ない歌声と歌詞に、忘れたくても忘れられない記憶が蘇って胸がヒリヒリする。 「なんか思い入れあるノ?」 「ーーーちょっとだけ……」 「フーン……」 歯切れの悪い私に、先生はそれ以上何も聞かなかった。 小さく歌を口ずさみながら、何でもないように振る舞ってくれる。 ーーー本当に、嫌になるくらい私は子供だ。
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