第1章

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まるで私の気持ちが分かるかのように、そう言って玄関へと歩いて行った。 バタンーーーー。 重たい金属音を立ててドアが閉まるのを確認して、柴田君が床に仰向けに倒れ込んだ。 「あ”ーーー」 「だ、大丈夫?」 目を閉じて完全にノックアウトされている柴田君は、無言で首をフルフルと左右に振った。 「ひひひ、鬼の居ぬ間のなんとやらだ。 今のうちに伸びとけー」 ソファーにゆるく座っていた嶋本さんが、楽しそうにビールの缶を口に運ぶ。 「郁ちゃんは?疲れてない?」 「私は全然……。 ていうか、すみません。嶋本さんお休みだったのに……」 「ああ、いーよー別に何か予定あったわけじゃないしね。 ま、びっくりはしたけど」 そう。 先生が、勉強場所として連れてきてくれたのは、嶋本さんの暮らすワンルームの部屋だった。 先生も一人暮らしって聞いていたから、ひょっとして……って淡く期待していたけど、今となればホッとしたのも事実。 先生の部屋だったら多分……。 いや絶対集中出来なかったし、帰ってからも何度も何度も思い出して悶絶する、変態になりそうだったから。 ーーーそして、先生からお呼び出しを喰らった柴田君が、間髪入れずに仲間入りした。 ふ、とテーブルの上の空の灰皿が目に留まる。 「嶋本さんも、タバコ吸われるんですね」 「え、俺?俺は吸わないよ。 一応料理人だから、味覚が変わるものや食材に匂いが移るものは避けてるんだ」 「じゃあ、これ………」 「来客用。 ま、もっぱら恭一用だね」
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