第1章

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お盆を過ぎたあたりから、少しだけ夕方の風が匂いを変えてきた。 汗が嫌で、早めに入ったお風呂上がり。 自分の部屋で窓を開けてそう思った。 「♪~♪~♪」 机の上の携帯が先生からの着信を告げる。 「もしもしっ!」 『ドーモ』 「どーも、です」 頬の筋肉が緩むのが隠せない。 『今ダイジョウブ?』 「はい、全然っ!」 自分でも音色があがってしまうのが分かる。 『ゴキゲンですネ。 あ、やっと課題終わったンダ?』 「うっ……」 先生の声に浮ついた気持ちが固まる。 それは、つい数日前にも交わした会話で。 “先生”として本気でお説教されていた。 『ハァ………知らナイよ、もーあっという間に終わりダネ、夏休み』 「ち、ちゃんと仕上げます」 『当たり前デス』 クッ、と息を詰めて笑う声が鼓膜を揺さぶる。 あの日以来ーーー。 あの日以来、先生とは会えていない。 夏休みと言えども、バスケ部の顧問である先生は、練習や大会の毎日で。 その後にはナントカ研修会があったりと、多忙なようだった。 「……先生たちって、夏休みのんびりしてるのかと思ってた」 思わず考えていたことが口をついて出た。
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