第1章

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「へぇ……。先生、結構吸うんだ」 「結構どころか、かなりのヘビースモーカーでしょう、あれは。 見てて思わない?」 「あ、私吸ってるとこ、あんまり見たことなくて………」 私の言葉に、嶋本さんの動きが止まる。 「えーマジで?俺、この前初対面みたいなモンなのに、ずーっと吸ってたぜ」 柴田君が体を横にして、肘をつきながら怪訝そうな顔をした。 「それに、センセーんとこ行ったらいタバコの匂いがする日があるんだよ。 あれ、冴島のだったんだなぁ」 柴田君の言葉に、血液が逆流するようなめまいを感じる。  悠花さんの部屋………。 「ちょっ、少年!!」 「え!?あ、いやっ。そ、そうじゃなくて……」 改めて思い知るその存在。 圧倒的なオーラで微笑む悠花さんを思い出して、胸が強く締め付けられた。 「なな、なし!今のなし!! 羽村、嘘の方向でっ」 起き上がって両手をブンブンふり、 慌てふためく柴田君に小さく笑ってみせる。 「……大丈夫だよ。 ちゃんと知ってるから」 「………」 あちゃーと、額に手を当てる嶋本さんと、あわわわわ、なんて言いながら挙動不審な柴田君に作り笑顔を重ねる。 「そうだ、今のうちにお姉ちゃんに電話しておくね。 ベランダ、出てもいいですか?」
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