第1章

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優しく頷く嶋本さんにお礼を言って、携帯片手にベランダに出る。 後ろ手に窓を閉めていると、柴田君がバシッと叩かれてる音がして少し、笑ってしまった。 エアコンの効いた室内と違って、むんっ、とした生ぬるい風がまとわりついてきた。 手にした携帯で、すみれちゃんに短くメールを打つ。 大丈夫だっていう返信を確かめた後、ベランダの縁に寄りかかって外を眺める。 すっきりしない、この風が私の心の中と同じ気がしてただ、身を任せていると。 「ナンかおもしろいものでも見えた?」 冷たい空気が逆流してくる気配と同時に先生が、窓を開けて立っていた。 「あれ?柴田君たちは?」 先生の後ろに人影がない。 「さー、俺と入れ替わりに出て行ったよ。 暁にボコボコ蹴られながら」 「柴田君も嶋本さんも……いい人ですよね」 私の隣に並び、縁に両肘をかける先生から、微かにタバコのかおりがする。 「アンタにかかったら、悪いヒトなんていないんじゃない?」 ふ、と喉を揺らすように笑う先生の横顔を見つめる。 「どした」 視線を受けて不思議そうな先生の影に、悠花さんがちらつく。 「………タバコって、おいしいの?」 「はぁ?」
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