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優しく頷く嶋本さんにお礼を言って、携帯片手にベランダに出る。
後ろ手に窓を閉めていると、柴田君がバシッと叩かれてる音がして少し、笑ってしまった。
エアコンの効いた室内と違って、むんっ、とした生ぬるい風がまとわりついてきた。
手にした携帯で、すみれちゃんに短くメールを打つ。
大丈夫だっていう返信を確かめた後、ベランダの縁に寄りかかって外を眺める。
すっきりしない、この風が私の心の中と同じ気がしてただ、身を任せていると。
「ナンかおもしろいものでも見えた?」
冷たい空気が逆流してくる気配と同時に先生が、窓を開けて立っていた。
「あれ?柴田君たちは?」
先生の後ろに人影がない。
「さー、俺と入れ替わりに出て行ったよ。
暁にボコボコ蹴られながら」
「柴田君も嶋本さんも……いい人ですよね」
私の隣に並び、縁に両肘をかける先生から、微かにタバコのかおりがする。
「アンタにかかったら、悪いヒトなんていないんじゃない?」
ふ、と喉を揺らすように笑う先生の横顔を見つめる。
「どした」
視線を受けて不思議そうな先生の影に、悠花さんがちらつく。
「………タバコって、おいしいの?」
「はぁ?」
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