第1章

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***** 長いと思っていた夏休みも、あと数日となっていた。 まだ残暑が厳しい中、淡々と読み上げられるお経に耳を傾けているつもりでも、暗号のようなその音から意味を取り出せない。 ふと視線をあげると、遺影の中でとびっきりの笑顔を浮かべていて。 まだどこかにいるような、ここだけ時が止まってしまっているような。 胸にある焼石が、ジンジンと周りを焦がしていく。 全ての法要が終わって帰る支度をしていたら。 「郁ちゃん」 おばさんに声をかけられて視線を交わす。 小さく頭を下げる私の両手を握りしめて微笑んでくれた。 「今日は本当にありがとう。 来てくれるとは思ってなかったら……」 おばさん……また痩せたな……。 涙を瞳いっぱいに溜めているその姿に首を振る。 「郁ちゃん、少し時間ある? 渡したいものがあるの」 「……はい」 「私、お見送りだけしてくるからちょっと待っててね」 こくりと頷くと、おばさんは玄関へと向かった。 とたんにしん、とした部屋の中。 もう一度遺影を見つめる。 「希(のぞみ)ちゃん……もう1年経ったよ」 私の声だけが、静かに響いた。
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