第1章

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「ふはっ、アホか。 そんなラクな社会人がいますか。 勉強会やら二学期の授業計画やら、やること山積みなんデス」 「ですよねぇー」 呆れ声の先生に、納得して気まずくて笑ってみせた。 『………』 ふ、と訪れた不自然な沈黙。 「……先生?」 『ヤになった?』 「え?」 『ヤになった? タボーなシャカイジンで』 「あ………」 先生の言わんとすることが分かって、携帯を持つ手に少しだけ力が入る。 「……ヤ、になりません。 それぐらいで嫌になれるんだったら、苦労しないです」 ふ、と先生が息を吐く音が小さく届く。 『………ソーデスカ』 「ソーデスヨ」 はは、って笑う先生の声は、電話を通すといつもよりちょっと低く響いて。 私の胸はそれだけで、きゅっと啼く。
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