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目の前を真っ黒に日焼けした小学生が虫取りあみを持って走っていく。
「なんかさぁー、ガキの頃って高校生がすっげー大人に見えたけど……。
俺らって、まだまだ子供だよなぁ」
走り去った後ろ姿をぼんやりと見送りながら、柴田君が呟いた。
「………ホント。
結局自分の力だけじゃ、何も出来ないね」
だな、と答えた柴田君の声は「よっしゃー!セミ捕ったどー!!」と歓声を上げる小学生にかき消された。
夏の強い日差しが、目に痛い。
ふ、とポケットで振動する携帯に気が付いて手に取る。
「……誰だろ、知らない番号……」
「ほっとけばー?」
気にとめることもなく、背伸びをしながらそう言う柴田君に頷いて鳴り止むのを待つ。
だけど、一向に相手は諦める様子がなくて戸惑っていると
「えらくしつこいな。
取ってみ?変な奴だっなら俺が変わってやるから」
「うん、ありがと」
少し緊張しながら通話ボタンをタッチする。
「もしもし?」
『はぁ……っ、はぁ…』
「!!?」
女の人の息苦しそうな気配に、一気に体が強張る。
『か、おる………ちゃん?』
「!!!ゆっ、悠花さん!?」
その弱々しく鳴る鈴のよう声に、思わず立ち上がってしまった。
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