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ふー、と息を吐く音がザラザラと携帯から響く。
『化学は嫌で、数学はいけるの?』
「どっかな……数学はふわっと、浮かぶので……」
『ククッ、おっそろしいな、アンタの野性的感覚』
自分でも自覚してる揺らぎを指摘されて、ぐう、と息を呑む。
『理系か文系か……簡単に判断できないタイプですネ』
再び届く、携帯越しの吐息。
長く緩やかに吐き出されるその気配に、不意に先生が反対側の歩道でタバコを吸っていた姿が浮かび上がる。
そう言えば、あの時のキスもタバコの薫りがした………。
途端に、重なった唇からの熱と感触を思い出して、悶絶しそうになる。
『………聞いてますカ』
「ごごごご、ごめんなさいっ!」
はっとして返事をするものの、思いっきりカミカミで声も上擦ってしまった。
『………この前のキス、思い出してた、トカ?』
「!!!!!」
ぶわっと、耳まで一瞬のうちに沸騰して慌てて口を押さえる。
じゃないと、目に見えないものまで先生に漏れ伝わりそうで………。
『ブッ!』
必死に自分と闘う私に、先生が思いっきり吹き出した。
『アンタ、ほんと解りやすすぎ。
鼻息ハーハー言ってるよ』
………終わった。
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