第11話

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まだ本人に確認してないのに、行く前提になっている。 でも、自分が歌うのを見せるのは恥ずかしい。声が裏返りそうだ。 「普通かー。でも、イケメンは何してもさまになるからね」 美妃の言葉に、田口は不貞腐れた表情をする。 「そうかよ。あいつ、カラオケあんま好きじゃないような事言ってた気がするし」 花菜はやっぱりという顔になる。 「じゃあ、誘っても断られるかもしれないよね」 「いやいや、それはないね」 田口はにやにやしてスマホを操作しだした。 「なに、メール?」 早智が田口のスマホを覗き、途端に吹き出す。 「これは……来ないわけにはいかないかもね」 「見せて見せて!」 美妃も身を乗り出す。 花菜も気になり、スマホを見ようとすると、早智が制した。 「花菜は見ない方がいいね」 美妃もにやにやして頷く。 「そうだねー。晴れて彼女になったら、教えてあげる」 「えー?なにそれ?すごい気になる……。彼女になれなかったら聞けないの?」 早智が花菜の頭を撫でる。 「そうそう。だからがんばんなよー」 「そうだそうだ。相原に負けんなよ」 普通に会話に参加している田口に、花菜は不安になる。 「田口……。言いふらしたりしないでね?おしゃべりなんだから」 「おいおい、信用ないな。言っていい事と悪い事の区別はついてるつもりだぞ?」 そこで、田口のスマホが振動する。 「お、来た来た」 田口はスマホを見る。明らかに面白がっている感じだ。 「『行く。後で覚えてろよ』だってさ」
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