6人が本棚に入れています
本棚に追加
美妃と田口とのやり取りが続く中、早智が約束の時間だからと帰った。
ふと視線を感じて目をやると、教室の入口に充が立っていた。
スポーツバックを肩にかけ、目が合うと軽く手を上げて近づいてくる。
「おー、成宮」
「ああ、ほんとにカラオケ行くのか?」
若干面倒そうな雰囲気が出ている。
「行く行く。まだ他には声かけてないんだけどさ」
「誰誘うんだよ?」
「中嶋とかから暇だってラインきたんだけどな。あ、中嶋ってサッカー部なんだけどさ」
田口が美妃と花菜に言う。
知らない男子の名前にどきりとする。やはり初対面の男子とカラオケに行くのは緊張する。
充が田口の髪を掴んで顔を覗きこむ。
「いててて!」
「話が違うだろ」
「そうだったか?いいだろー?人数多い方が盛り上がるし。嫌なら自分で周りからガードしろよ」
充が花菜をちらりと見る。
気まずそうな顔で、すぐに目をそらされる。
何の話かよくわからず、どういう顔をしていいかわからなかった。
「とにかくさ、行こうよ」
美妃の言葉で、取り敢えず学校を出る事にした。
「げっ」
田口と充が同時に呟く。
視線の先には、廊下の壁にもたれかかる、愛美の姿があった。
「これからどっか行くの?」
愛美は上目遣いで男子ふたりに聞く。
「あー……。まぁ、ね」
珍しく田口の歯切れが悪い。
充に至っては、横を向いて話すのを完全に放棄している。
「ふーん、4人で?」
美妃が花菜の耳に顔を寄せ、ひそひそと話す。
「いやーな展開だね」
「うーん……」
多分、一緒に行きたいんだよね。
「カラオケでも行こうかって……な?」
田口が美妃と花菜を振り返る。
話をふられ、ふたりとも頷く。
「私も行きたいなー。ね、いいでしょ?」
少し首を傾げて微笑む。
白い肌にピンクのチークが映えて、本当に可愛い。
「いや……お前らあんま知らないだろ?」
それまで黙っていた充が口を開く。
「そんな事ないよ。ね、矢澤さん?私達、この前友達になったもんね?」
最初のコメントを投稿しよう!