「なんだその指令」

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「じゃあ、説明するよ。今回、四天王が僕達や他のグループに出した指令はね」 「他の? 俺達以外の奴等も同じ指令を受けているのか?」 今回俺達に出されたらしい指令は俺達だけではなく、他のグループにも出されたことに俺は少し驚いた。 今まで俺達は他にも『悪霊化してしまった魂を排除せよ』とか、『彷徨っている魂を保護せよ』など色々な指令を受けてきた。 だが、それは俺が所属しているグループや個人での話であって今回みたいに他のグループと共同でやるなんてこと俺が組織に入ってから五百年くらいだが今までなかった。 「うん。僕達以外に、冬樹とおちびちゃんのグループにも出されているよ」 「お前……紅アカ自身にまたおちびちゃんなんて言うんじゃねえぞ。いつもそれで面倒なことになるだろ」 「面白いんだけどな」 「おい」 悪びれもなく笑う那音を軽く小突くと、俺は浅く息を吐いた。 この組織は俺や那音みたいに、例外はあれどニンゲン達が語る『御伽噺』の奴等の魂で出来た妖怪が多く集まっている。 不思議なことにな。那音が言っていた冬樹はえーっと、グリム童話だったか。 そこで語られている『白雪姫』っていう女の魂の妖怪だ。 ニンゲンだった時は義母に嫉妬されるくらい美しい女だったらしいが、妖怪化したときに他の魂が混じって男として誕生した。 残念なことに。 本人は、今の姿を気に入っているらしく見かける度に男らしくなっていく。 この前見た雑誌では『イケメン妖怪ランキング』で一位でとうとう殿堂いりを果たしたと書かれていた。 世の中って不平等だとその時ほど思ったことはない。 いや、俺の今の容姿に不満があるわけじゃないけど。 初めて妖怪化した自分の姿を認識した時はニンゲンみたいな顔、身体になっていてかなり驚いた。 だって、今までニンゲンに近いとはいえ猿の姿だったからな。 孫悟空の時はニンゲンに限りなく近い姿をしたり、ニンゲンに化けていたりしていたがそれでも霊長類の顔をしていた。 そのことを思うと大分かっこよくなったと思う。 ……容姿について俺はよく分かってないので余り言えないのだが。
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