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「久しぶりだけど、やっぱなにも変わらないな。ここは」
暗いじめっとした路地の砂利を踏みしめながら、俺は相変わらずの景色に溜息をついた。
最近、やっと他国の文化を取り入れたとかで少々排気ガス等で空気が汚らしいがこれでこの国も他の国より劣るなんてことは言われなくなるだろう。
俺達は……ニンゲン好きが過ぎてニンゲンに化けて同じ世界に住んでいる奴もいるという例外もあるが、基本はニンゲン達とは違う空間に住んでいる。
が、元々この世界ありきの俺達の世界だ。
この世界が変われば連動して俺達の世界も変わる。
だからと言うのもおかしいかもしれないが、この時代に妖怪になった奴は『ゆとり教育世代』って言うのか?
そのせいでかなり礼儀がなってない奴等ばかりだ。
ゆとり教育というのも、考えようだと俺は思う。
「さて、と。いい加減に巫女の子孫サマを見つけ出さないとな」
ニンゲンのところに来て早三日。
朝昼晩を四人のローテンションで街を探し回るが、探し人である巫女は全く見つからなかった。
この街には冬樹が『巫女の気配がする』って情報を俺達に渡したから来たのだが、ガセネタだったかもな。
そう思ってしまうくらい何も見つからない。
「……どこにいるって言うんだ。子孫サマは」
毒づいたところでその子孫が出てくるはずもなく。
出てきたのは俺の長い溜息だけだった。
……いや、違うな。
余計なものも呼び出してしまったらしい。
角を曲がった途端に風が運んできた鼻を突く汗臭いような獣のような匂いに顔を顰める。
その後に感じた薄っぺらい妖気にすぐ妖気の持ち主は小物だと判断して少しだけ俺の口角が上がった。
丁度いい。
この苛立ちはその小物に向けさせてもらおう。
そもそも、禁を破ってこんなニンゲンの都市に出て来てしまったそいつが悪い。
上がった口角はそのままに、気配を辿っていく。
気配を辿った結果で着いた路地裏の突き当たりで俺は、驚愕の光景と人物に遭遇してしまうことになる。
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