「なんだその指令」

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妖怪そのものの姿に近い程弱い低級妖怪、ニンゲンとほぼ同じ……つまり俺や那音は上級妖怪にあたる。 その中でも、こいつは鬼そのものの姿。 つまり低級妖怪の訳だが、上級の俺が低級を殺すなんてことは造作もない。 ただ、少し前では……反乱が起こっていなければ、同胞として違う出会い方をしたかもしれないと思うと少し切ない。 鬼の種族のほとんどは毘沙門天の部下である鬼神の夜叉や羅刹の管轄だから。 「何、考えてんだか……馬鹿馬鹿しい。面倒だが、早く那音達と合流するか」 俺にしては珍しい甘すぎる考えに、そんなことを考えた自分に吐き気がした。 自嘲気味に笑いながら、待ち合わせの場所に向かう。 赤鬼の遺骸は処理班が片付けにくるだろう。 待ち合わせの場所に着く前に、懐に入れておいた携帯電話が鳴って不覚にも俺は少し驚いてしまった。 「……誰だよ、こんな夜中に電話してくる非常識な奴は」 薄々誰がかけてきたのは分かっていてはいたが、それを思うと電話にでたくない。 現実逃避じみたことを呟きながら喧しい音を響かせる携帯に手をのばした。 「あ、猿!? オレオレっ薊だけど!!」 「うるさい。猿って呼ぶなクソ鳥。焼き鳥にするぞ」 いっそ、着信音のほうが静かだったんじゃないかと思うくらい受話器越しに喚きたてる仲間に遠慮なく罵る。 ……その所為で余計に騒がしくなるのだが。 「で、俺に何の用だ。用がないんだったら、きるぞ」 「ち、違うって! えっと、巫女の子孫様の中で一番力を持っていて多分指令の子が見つかったんだよ。冬樹が教えてくれた」 「奇遇だな。俺もその指令の奴らしき女を見つけた」 ぇえ!? と、かなり驚いた声で叫ばれてそろそろ鼓膜の危機を感じた俺は携帯を耳元から少し離した。 冬樹から聞いた話によれば、その巫女の子孫の名は『瀬川柊』というらしい。 巫女の血筋で唯一その家系を受け継ぎ神社を営んでいる家の女。 別に俺は今まで力をある程度持っていて、尚且つ俺達に協力的であれば誰でもいいと思っていた。 でも、今は違う。 あの女を見てしまってから俺はもう毘沙門天をなんとかするのはあの女以外ありえない。 それくらいあの女に魅せられていた。 それは、あの巫女の力が強いからなのかはたまたは妖怪としての俺が感じたことなのか……それはわからない。
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