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最初は馬鹿馬鹿しいと思っていた妖怪達も時代が変わるに連れてニンゲンを喰らうということは弱い低級妖怪がすることだ、と意識が変わりほとんどの妖怪達はニンゲンを喰らうことはなくなった。
なのに、毘沙門天が率いる妖怪達がまた法律違反とされるニンゲンの前に行ってニンゲンを喰らうようになったから他の妖怪もその真似をしだすようになってしまった。
有名人が、俺達にもできそうなことをしだしたら真似しちまうのと一緒だな。
最初は密かに。
だんだんとおおっぴらになってきたニンゲンの捕食は、流石のニンゲンも『変死事件!』じゃ済まされないレベルになっていた。
それで、若いニンゲンの奴等からどんどん都市伝説だの幽霊だの当たらずとも遠からずな憶測を立て始めて騒ぎが大きくなってしまった。
だから、俺達が動き出してこの騒ぎを治めることになったんだが……
もうすでに事は俺達だけじゃどうにもならないことになっていた。
毘沙門天が潜んでいるという館を包囲しても、ニンゲンを喰らって膨大した妖力を持ってしまったアイツ等を止める術はない。
俺達は、包囲していた奴等が次々殺されていくのを呆然と見ることしかできなかった。
「――で、手分けして捜そうと思ってるんだ……智也? 僕の話ちゃんと聞いてる?」
「……あ、悪い全然聞いてなかった」
「一応君の上司なんだけどな」
「だから悪いって言ってるだろ?」
「いいけどね」
むぅ、と何百年も生きている大妖怪とは思えない分かり易い拗ね方をする那音に俺は苦く笑う。
見た目は確かに幼いが、ガタイがいい為余りよくは思わない。
たまーに、コレがいいの! なんて言う女がいるが趣味悪過ぎるだろと俺は思わずにはいられない。
……さて。
そろそろ那音には機嫌直して、指令の内容を聞かないとな。
余り機嫌が悪いままで放っておくと後でどんな仕返しをしてくるか分からない。
「悪い。最近色々ありすぎて、それを思い出したんだ。もう一回説明してくれ」
「そう、だね。確かに最近は色々あったし……うん。もう一度説明するから、今度はちゃんと聞いて」
「ああ。頼むわ」
俺が言った言葉に分かり易く表情を変えた那音に、少しだけ罪悪感を覚える。
正直に言うと、あんまり俺は気にしてないんだけどな。
死んだ奴等も俺とは無関係な奴だし。
那音は何だかんだ言いつつ、かなり気にするが。
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