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入院した途端気が緩んだのか、痛みの強さと頻度が如実に弱まっていくのが分かった。早いとこ産みたいのに逃げていくもどかしさ。痛みが逃げていくこと自体は楽なのだが精神的には酷だ。なお、この陣痛を、前駆陣痛と呼ぶらしい。――出産直前の本陣痛に比べれば『微弱』だが下痢よりか断然痛い。ぎゅーっと絞られる痛みの渦がお腹に渦巻いている感じ。
入院中は一時間おきに看護師が血圧などを測りに来た。来るたび、「おうちに戻ることになるでしょうね」「陣痛ますます弱まってますね」とペシミスティックな言葉ばかり残していった。
嫌味な性格が人相に表れているひとだった。
退院の際、廊下で助産婦さんに会うたび声をかけられた。
「しっかり休んで下さいね」
「運動してくださいね」
……どっちにすりゃいいんだと思った。
同時に、みんなに、空振りで来たのが知れ渡っているのが恥ずかしく思った。
誰に言われたわけでもないが人騒がせな妊婦だと。
――病院を去ったのち、自宅にて半日ほどベッドのうえで横になって過ごした。
まずは、睡眠だと思った。恐ろしいことに、いざ出産になると何十時間と眠れないと聞く。――できるだけ寝て体力を温存するがベスト。
だが眠れない。
眠気など吹っ飛ぶ痛みがやってきて、寒くもないのに震え、鳥肌が立つ。痛すぎて海老みたいに背中が反り返る。夏でもないのにベッドがじっとり蒸れる。――どの程度に至れば病院に連絡すればいいのか分からないし、だいたい夫は会社なので「あっち行って!」と甘えることなどもできやしない。
そのうちに、大をしたいのにできない感覚がやってきた。
何時間とトイレから出れない。いやこれ出たら赤ちゃん出るんじゃないか、というような。
夕刻、再び病院に電話をした。
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