phase3

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「あの。いきみたいんですが、……」 「まだ駄目!」  すごい勢いで却下される。 「そしたらどーすれば、……うっ」 「使う?」 「あはい」  テニスボールを手渡された。  肛門の辺りをがっちり押さえ込む。……じゃないと出てきそうだ。我慢しろ我慢しろ、いや、痛みを逃せ逃せ。 「ひ、ひ、ふぅ~でも、なーんでもいいのよ。あいまちょっと出てくからちょっと待っててね」 「あはぃい」声が裏返った。  分娩室にひとり残され、痛みにのたうち回る。  振り返るとこの時間が孤独ですごく、長かった。  他に誰も居ない。どうやって待てばいいのか。ひたすら来る痛みの波を分かち合う相手も居ない。  出そうになるのを必死に押さえるのは、出そうになる嘔吐物を無理矢理押さえ込む苦しさがあった。  ――だから、助産婦が医師を連れて戻ってきたときは、神に救われた心地だった。 (わたしは無宗教だ)
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