34人が本棚に入れています
本棚に追加
phase4
診察を受けるときにいつも足を開くが、今回、違うのは「お産のため」だということ。
片足ずつを固定する足の置き場があって、そこに足を入れるとき、からだが思うように動かなくてびっくりした。
動かないでくのぼう状態だった。助産婦の介助で入れた。
「子宮口が……八センチ。くらい、開いていますね」
「八センチですか!? うわぁ……」嘘みたいだ。
この二週間、診察されるたびに子宮口が開いていない開いていない開いていないと呪文のように言われていたのに。……ということは。
いよいよだ。
分娩であの体勢、そして「いきんでください」と指令がくだる。――押さえまくっていた過去五日間を考えれば神展開だった。
そして医師が出て行く(他のお産も立て込んでいるらしく)。
心細くなったところを、助産婦が声をかけてくれた。「いきむって分かります?」
「いえ分かりません」
「いたーいのが来たときにぐうっとお腹に力を入れるの。息を吸ってふぅーと息を吐きながらぐぅーっ、とね。ひ、ひ、ふぅ~、のほうがやりやすいかしら」
「あはい」
「力入れるとき、ハンドルをぐぅーっと掴むの」
「体操の懸垂みたいな感じですか」
「そうそう」
更に助産婦さんは説明を続けた。名を亀田トメという(分娩室に入ったときに丁寧に名乗ってくださった。しかし姑となることを運命づけられたかのネーミングだ)。
最初のコメントを投稿しよう!