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アメーバー宇宙
【地球時間 西暦2150年】
『なぁ――今日の講師、誰だった?』
『確か、【デウス】って名前の奴だったぞ』
『それって、大昔の地球神の名前だろ!』
『ここの研究者達って地球マニアが多いようで、皆にその手の名前付けているよ』
『俺たちの先祖は昔、地球に住んでいたらしいけど…どうして地球なのか、さっぱり分からない』
『おぃ、その【神】が現れたぞ』
この国では教育システムとして膨大な情報を一辺倒に理解させるのでは無く、個々のレベルをデータ化して得意分野を引き伸ばす為プログラムされた、ホログラムティーチャー(HT)が講師として活躍していた。
『それでは、今日は宇宙の成り立ちと時間について説明します――――
専攻レベルの高い者は前の席に移動します』
宇宙科学を得意とする生徒達の席が自動で配置換えされ、銀色の輪郭のハッキリしないデウスの前に移された。
『さぁ―――皆、これを見て』
目の前の大型モニターの中にデウスが入り込むと、画面全体に不気味なものを映し出した。
『この映像はアメーバーでは無いぞ―――皆がいる、この宇宙をイメージしたものだ。
ちょっとグロテスクだが、生きているようだね』
楕円形のグニョグニョした動きをする宇宙モデルは、本当にアメーバーの様にその形を変形させながら膨張していた。
しかも、見た目は多核アメーバーと言ったところか、核に見える部分が大小の銀河で2千億個も散らばっている。
デウスが一部分を選びズームさせると、渦を巻いた銀河の中心部分には真っ黒な穴の様なものが見えた。
――――ブラックホールである。
『さぁ―――皆、良くここを見て。
今から質量の大きい天体を消滅させて、ブラックホールを造ります』
デウスはアメーバー宇宙にある小銀河に年老いた太陽を見つけ、先の尖った杖の様な物で爆発させて見せた。
『うぁぁ! 眩しい――――』
『そらっ、穴が開いたぞ―――付近の恒星と液体の様なものが吸い込まれていくのが分かるか―――これが役目を終えたダークエネルギーだ。
実はね、ブラックホールの役目とはこれだけでは無く、裏次元では新たな星を誕生させている事が分かったのさ』
『まるで…宇宙が生命を持っている様だ――』
『君、その通りだ!
君達、生命を持つ者はこの宇宙のしくみの一部でしかないのだよ―――
つまり、宇宙が君達を生み出したのだ』
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