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「オマエ、ないてんじゃねーよ、ばか!あと部屋をかたずけたらたら外で立って
いろ。わかったか、たたじゃおかねえからな、わかったかよ、ばか」
そういって勇太の背中を足でけった。勇太は痛がりながら泣きながらゆっくりと
少しずつ部屋をかたずけた。そして終わると良一が言う。
「おい!ばか!終わったんなら外の門で立ってろ、いいな、俺がいいっていうま
でたってろよ。勝手に帰ってきたらただじゃおかねえからな。」
怒鳴りちらして勇太がうなずくのを確認する。勇太は泣きながら外に出
た・・・・。 外はもう暗く風が寒かった。勇太は門の前に立って悲しくなりな
がら何も考えずに立った。
一時間半ごろ雨が降り始めた。それは強さを増して大雨になった。勇太は体全身
が冷えて頭が猛烈に熱くなった。強烈な頭の痛みと熱のせいでくらくらして、
立っているのがやっとだった。
夜の十一時時三十分を過ぎたころ母と父が帰ってきた。母が言う。
「何しているの、勇太ちゃん、部屋に入りなさい。」
父の長谷川健一は勇太を見て驚きながら何も言わなかった。 勇太はやっと家に
入ることができた。
頭が痛いといい熱を測ってみると三十九点八度の高熱が出ていた。健一が何故、
勇太が外に出ていたのか良一に聞くと良一は狂人のような顔をして怒鳴った。
「あのバカが部屋を汚くして寝てたから教育してやったんだ。」
父と母はおびえながらそれ以上何も言わなかった。
勇太は二階に布団を引かれそこで電気を完全に消して寝た。頭を冷やすため冷た
い手ぬぐいをかけたが薬はもらえず、そのあとも何の看病もされなかった。運が
悪ければ肺炎を起こして死んでいただろう。体は冷水のように寒く、頭は熱く、
肺は焼けるように痛かった。
そして一晩中泣きながら苦しんだ。たった一人で。
それから毎日、地獄のような日々がつついた。三百六十五日ほとんど食事を与え
られず、外の門に夜遅くまでたたされた。夜は布団に入れば泣く時間だった。そ
のうち気がおかしくなっていった。体はやせ細り、物を覚えることが何もできな
くなっていた。
ある日、夜泣いていると死にたくなっていた。そして包丁で死のうと思った時、
心の中から不思議な少年の声が聞こえた。彼は言う。
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