最終話:お別れ

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「それでは、お元気で、アーシャさん」  優奈が手を振る。 「心配はしていないが、万が一には気をつけろよ」 「うん、大丈夫。良太こそ体に気を付けてね……行ってきます!」  そう言って、彼女はゲートの向こうへと消えて行く。金属探知機のゲートを無事抜けて、彼女は出発ロビーへ。彼女がいなくなったゲートをしばらく見つめてから、良太と優奈は飛行機を見送ることはなく帰路についた。どの飛行機がアーシャの載る機体なのか、よくわからなかったからだ。  従業員募集の張り紙を作ったあの日、アーシャと性行をした時から、良太は魔法を使えるようになっていた。悪魔と契約する際、女性は処女をささげるという契約の方法もあり、それゆえ魔女裁判の際には女性が処女であるかどうかを調べることがあった。逆に悪魔が女性なら、童貞であった良太はアーシャと契約出来たようで。禁欲生活も長かったおかげか、数秒程度なら姿を消す魔法を、アーシャから受け継ぐ事が出来ていた。  おそらく、日常生活で使用することは少ないだろうが、それがアーシャとのつながりだと思うと、この能力を大切にしようと、そう思いながら、小銭とか食器とかを一瞬だけ透明にして、彼はほくそ笑むのであった。。  見上げた空に飛行機が舞っている。アーシャがそこにいるような気がして、人知れず少しだけ手を振った。
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