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「なんなんですか、貴方たちは」
「へ、小さい女の子がこんな夜遅くにこんなところを歩くのは感心しねーな」
身長一四〇あるかないかの少女は、男三人に囲まれていた。周囲に民家は少なく、あるのは小さな町工場や建設会社の事務所など、深夜の時間帯には無人となっている建物ばかり。
大声を出しても、これでは助けは来ないだろう。
「そうそう……まぁ、何が言いたいかはわかるよな?」
その男の中の一人が、折りたたみ式のナイフをこれ見よがしに見せ付ける。
「……あの、貴方たち、童貞は一人もいませんよね」
「はぁ? この状況でそんなこと聞いちゃう? 大丈夫だよ、俺ら童貞じゃないから、優しく気持ちよくしてあげるなんてつまらないんだよね」
こういった婦女子を襲うような男達は、女性が嫌がるところ、痛がるところを見て興奮するタイプがいる。そして、こいつらはまさしくそのタイプらしい。普通の女性なら恐らく、青ざめるだろう。逃げようと背を向けているかもしれない。防犯ブザーを鳴らしたり、大声を出したりするかもしれないし、動けなくって縮こまってしまうかもしれない。
「そうよね。貴方達、魔力を持っていないもの」
大きくため息を一つ。少女は、人差し指、中指、薬指を立てて、真ん中の男の股間にその指を付きたてる。小学生同士が遊びでやるカンチョーとは訳が違う、殺意さえ篭って見える、見事な一撃であった。
相手が身構える前に、少女は思いっきり足を踏んづける。痛みで頭を下げたその男のこめかみに、中指の第二関節を叩き込んだ。攻撃を受けた二人はその場に蹲り、うめき声すら上げない。
「な、な……何しやがる」
「専守防衛よ」
世間知らずのお嬢様の如く無邪気に微笑んで、アーシャは身構える。残るは一人。
「舐めやがって……」
最後に残ったのは、ナイフを持った一人であった。一番厄介なだけに、一対一で戦いたい相手だ。
「死ね!!」
そう言って、男はナイフを振り下ろした。女は一瞬で男の懐に入り込み、ボディーブロー。みぞおちに拳を叩き込んで、相手を蹲らせた。その時落としたナイフを拾いあげ、少女はそれをおもむろに逆手へ持ちかえ、舌なめずり。
「そんな貴方達でも、魂を喰らえば魔力は手に入る。貰うわ」
少女は、彼らの首を三人分瞬く間に切り裂き、噴出したその血を手品のように手の平に集め、飲み干した。男達は叫び声を上げる暇もない。
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