第5話

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その微笑みで今まで何人の女が彼の腕の中へ落ちたのだろう。 本人は、優しさは罪だってことを自覚してるのだろうか。 卑屈な考えが脳裏を独占し、 肩を並べて歩き出すも、適当な話題が出て来ずで。 「今日、ブーツじゃないんだ? そんなパンプスで寒くない?」 「…うん…、平気…」 田原さんが話をふってくれても、会話が波に乗ることはない。     聞いてみたくて仕方ない疑問が自分の胸中で渦巻き、 どうにもこうにもおさまりがつかない。 どうする? 聞いてみようか? さっきのこと。 どうする……? 2,3の自分との押し問答の後、 「あの、さ」 意を決して唇を動かした。
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