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その微笑みで今まで何人の女が彼の腕の中へ落ちたのだろう。
本人は、優しさは罪だってことを自覚してるのだろうか。
卑屈な考えが脳裏を独占し、
肩を並べて歩き出すも、適当な話題が出て来ずで。
「今日、ブーツじゃないんだ? そんなパンプスで寒くない?」
「…うん…、平気…」
田原さんが話をふってくれても、会話が波に乗ることはない。
聞いてみたくて仕方ない疑問が自分の胸中で渦巻き、
どうにもこうにもおさまりがつかない。
どうする?
聞いてみようか? さっきのこと。
どうする……?
2,3の自分との押し問答の後、
「あの、さ」
意を決して唇を動かした。
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