第5話

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アスマイルは法人向けの会社で個人への営業などありえない。 しかも、休日になんて。 「…大変だね」 「そうでもないよ」 胸がじくじくと痛み、これ以上は声が出てこなかった。 急に田原さんが遠い存在に思えてきて、空しさが口から飛び出さないように唇をギュッとしめる。 そりゃ、私はただのセフレだってわかっていたけど。  いつの間にかちょっと特別なんじゃないかな、って思ってた。 でも…… 田原さんにとっては、結局私は多くのセフレの中の一人の女と何ら変わりはなかったんだ。 大きな道路沿いからはずれてアパート等が立ち並ぶ住宅地に入り、田原さんが小さな白いマンションの中へと足を踏み入れた。
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