第5話

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こちらは胸の中がもやもやしているというのに、人の気も知らないで…… 「ねぇ、私はこの部屋に入る何番目の女?」 田原さんの軽いテンポを非難するように声のトーンを重くして言う。 「えー? そうだな、101番目かな?」 田原さんはどこか様子のおかしい私の気分を盛り上げようと必死だ。 「って、うそうそ。 そういえば、よく考えたら…初めて、かな?」 そんなことはもちろんわかってる。 いつもだったらもっと会話が続いて行くだろう。 だけど、 今はおどけた感じの返事が妙に癪に障る。 「あ、適当に座って、コーヒーでもいれるから」 本当にどうかしてるけど、田原さんが後ろ向きでいることにまでも苛立ちがつのる。 コーヒーの準備が優先されて私との会話がおざなりになっているように思えるからだ。
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