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「今、電話大丈夫?」
「…うん、田原さんこそ…、用事…は?」
「ああ、早く終わったから。 今、どのあたり?」
今いる正確な位置を言ったら、きっと飛び上がる。
「…もうすぐ、着くよ。西口だったよね? 出入り口付近に立って待っててくれますか?」
「OK」
通話を終了させた後、スマホをバッグへ押し込み、
黒く、もやもやとした感情を抱えたまま駅へと向かった。
濃い茶のコートに身を包み、スマホを操作している田原さんを見つけた。
ただ立っているだけなのに、道行く女性の目線が彼に向かっている。
いや、実際はそうではないかもしれないけど、何となくそんな気がする。
ふと顔を上げた田原さんが私に気づき、微笑んで手を上げた。
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