第1章

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「よう旦那」 「いらっしゃいませ、土方さん!」 客の来店をいいことに笹は沖田からサッと離れて土方のところへ行った 「ちょっ… まだ話が」 「お久しぶりです土方さん」 「おう 元気だったか」 土方はゆっくりと椅子に腰かける 「ええ元気で」 「土方さん聞いてくださいよ!」 笹が返事するのを遮って沖田は土方に言う 「笹さんったら斬り合いしてるところへ飛び込んで怪我したんですよ!」 土方は少し目を見開いたが、落ち着いた様子で笹を見た 「…毎度毎度勇敢なことだな」 「ちょっと何いってるんですか、笹さんは嫁入り前の娘なんですよ!」 「目も当てられない傷物になったら俺がもらってやる」 「ちょっと何言ってるんですか!本当に だめです笹さん!」 沖田は土方と笹の間に入ってわたわたと慌てる 「土方さんは小姑みたいじゃないですね」 笹はチラリと沖田を見た 「!」 沖田は嫌みを言われていることに気付き、ムッとした 「? そうだな」 何も知らない土方は普通に答えたあと、沖田を見て察した 「総司、人には性分ってのがあんだよ」 土方は得意げだった 「でも」 「でもでもだって?」 「…」 沖田はぶーたれた ――――――――――― ―――――――― 「沖田さんも、でもでもだってするんですね」 「うるさいです」 土方が帰ったあともぶっすりしている沖田に笹は話しかけた 「みんながみんなに優しくて、平和に暮らせる世の中になればいいのに そしたら沖田さんも私の心配なんかしなくてもよくなるのに」 沖田はすぐに何か言おうとしたが、笹がニコリと笑うので、何も言えなかった
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