第1章

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――――――――――― ―――――――― 「先日はうちの志士が失礼した 甘味屋に甘味を贈るのは喧嘩を売っているようなもの では髪飾りなどはと思ったが、 それは好みの問題があるからして では書物はと思ったが髪飾りと同じく… そもそも物で釣るように謝罪するのは如何なものか… と考えるだけ考えてみたのだが、 結局答えは出ず… だから治療代としてこの金を受け取っていただけぬか」 長々とマイペースに語るお侍に、笹はくらくらした とにかくたくさん考えてくれたらしいことはわかった 「嫁入り前の娘子に刀傷をつけるなどと武士として、 いや男として、人としてあるまじきこと… どう謝罪しても許されまい…」 のっぺりとした表情ですらすらと思考を述べるお侍に笹は尋ねる 「お侍さんは何と申されるのですか?」 「…何と、と言うと…」 「お名前を…」 「あぁ、俺としたことが申し訳ない 自分の名を知らせずに謝罪がしたいなどと、とんだ茶番… しかしあまり人には言ってはならぬ名… …いや、言おう 桂と申します」 自由人な侍、桂に やはりくらくらしている笹だった 「…で何でしたっけ?」 「何でした…とは…?」 「えっと…要件…」 「謝罪がしたいのだが術がなく、治療代だけでも受け取っていただきたい次第…」 「あ、あぁ 大丈夫ですよ もうほぼ完治していますから!」 「…ほぼ…? 傷口が塞がった程度なのか… 瘡蓋だけなのか… 前者ならば大丈夫とは言い切れまい」 「いやいや、後者ですから!」 桂はゆっくりと首を傾げた 「…痛みは…?」 「ないですっ!全然!」 「…しかし、受け取っていただきたい そこまで治すのに少しは治療代がかかったと思われるが…」 「自力で治しましたから!」 「む…何と丈夫な…」
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