第1章

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――――――――――― ―――――――― 弥生の月にて、桜が八分咲き こんな日の昼下がりは花見客がたくさん店に訪れる 「花より団子ってな」 団子屋の旦那は上機嫌だ そんな街全体がほろ酔い加減な朗らかな昼下がり、一人の青年浪士が千鳥足で団子を買いに来た 「旦那ぁー みたらし団子と三色団子 これで包めるだけ包んでくんなー あと酒ぇー」 「あんたもう出来上がってんのかい! お笹、ついてってやんなあ」 「はーい」 せっかくの花見日和 店内で食べる客は少なく、 笹は暇だったので喜んだ 旦那は団子を包んで青年浪士に渡した そして笹は酒を持って青年浪人のもとへ向かう 「おぉう? ついてきてくれんのかー いい女子だー」 「暇だったので」 鼻歌を歌う青年浪士とにぎやかな道を歩く 本当に楽しそうな横顔に、笹も何だか幸せな気分になった でもまあふらふら危なっかしかったので、気は抜けない たまに袖を引いて障害物を避けてやる 少し歩くと河原についた 人々は川に沿って咲く桜を囲んでわいわい宴 きっとこの青年の仲間がこの中にいるはず 「おーい!こっちだー! 平助ー!」 青年はぐりんと体を捻った 「新八さーん!」 そのとき青年は笹の手を握ると颯爽とその集団に走り寄った 「ちょっ…ちょっ…お侍さん!」 笹はぶんぶん揺れる酒瓶に笹はひやひやしながらついていった
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