第1章

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死にたい。 と、川へ飛び込んだ。 心臓にひたひたと水が染み込んでくるのがわかる。 温かく波打っていた私の心臓は、水に侵されて冷たく静まった。  波が身体を運ぶ。 遠くへ、遠くへ。 私の体は海で朽ちるだろう。 穢れた腐った体を食べる魚はいない。 太陽は私を忌んで冥い水底へ突き落とす。 かなしいね。 と、誰かが囁いた。 かなしいね。 と、答える代わりに、私の骨はぽろぽろ崩れる。 細かい砂粒に混じっても私のそれはすぐわかる。 呪われた白をしている。 川へ飛び込んで10年で海へついた。 海へついて50年で骨になった。 それからもう50年で砂粒になった。 砂粒になって100年経った。 クライ クライ クライ 私は、かなしいね。と、さすらった。 それからまた200年。 私は地球の涙のひとつぶになった。
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