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その先生はどういうわけか、わたしを見て口を開けた。
一秒、二秒。
三秒経った頃に、再びげふんと咳払いをし、「えーとどちらさん?」
「九月からこちらに転校する、都倉真咲といいます」
うえから下までを眺めて、「はあ」「そやったか」とぶつぶつと言う。――おじさんの、毎度のこの値踏みするような目線はなんなのだろう。あんまり、いい気はしない。
制服で来なかったのが失敗だったろうか。
改めて自分の服装を見た。――白と薄ピンクのギンガムチェックのワンピース。
ノースリーブ、というところがガキ臭かったろうか。
肩からポシェットバッグ下げてるところなんか、いかにも夏休み中の小学生な感じだし。
――内田先生と名乗った先生は、「生物室やったら、こっから渡り廊下で向こうの校舎行って、三階の奥やぞ」と教えてくれた。
渡り廊下と向こうの校舎というニューワードが二つ。
果たして辿り着けるのか甚だ不安だがどうにかなるだろう。
と信じ、内田先生に礼を言い、職員室を辞する。
――二度手間だがさっきのパネルの位置まで戻ることにした。急がば回れ。――校舎が二つもあるなんて情報読み取れなかったし、向こうの校舎に渡ればどうにかなるだろう、と思ったのだ。
壁にあたりなにかががさり、と音を立てた。
――忘れていた。
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