第二章 それは不幸なことじゃない

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 戸口に手をかけ、黒髪の彼と戸のあいだからひょいと顔を覗かせるそのひとは、わたしと目が合うと、ぱああと形容してもおかしくないくらいにフレンドリーに微笑んだ。そして、あはっ、と笑った。 「――きみ。鼻の頭真っ赤になっとるけど、このうどの大木とぶつかったの?」  ――男の子だ。  西洋人形みたいな可愛らしさ。外国人並みの明るい髪のいろで、てっきり女の子かと思っていた。――よくよく見ればもみあげのカットは男の子らしいカットだ。喉仏の特徴からしても。  その茶髪の彼は、職員室から完全にからだを出し、「マキってばさ。無駄にでかいんだからちゃーんと前確かめなきゃ駄目じゃん。女の子に痛い思いさせちゃあさ」 「うどとはなんだ。無駄という発言も撤回しろ。……だいたい、こいつのほうから勝手に飛び込んできたんだぞ」 「中学生、……んにゃ、小学生?」  わたしをじぃっと見てトンデモ発言をしてきた。 「……可哀想に。緑高(りょっこう)に来たばっかりに……」気の毒そうな目で見てくる。  それが、ふっと目を細める。  屈んで、目線の高さをわたしに合わせたと思ったら、「……ごめんね困らせちゃって」今度は憐れめだ。「きみ、お兄さんかお姉さんに会いに来たんでしょう? 名前、教えて? 連れてってあげるから」  いろいろと違うんだけど。  思わず頷きかける説得力。
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