第二章 それは不幸なことじゃない

9/19
前へ
/662ページ
次へ
「まさか、ウチの生徒だったとはね」 二階へと続く灰色の階段を茶髪の彼が上る。彼の隣を黒髪の彼が歩き、私は二人の数段後ろに続いた。 「いや、予想はついてた」 って、おいおい。 「嘘だろ。なんで黙ってたんだよ」 「お前で遊んだ」 お前っていうより、私も含めてなんじゃない。 「ひっどいなあ。最近、どんどん性格悪くなってない?」 「俺もそう思う」 「自分で認めちゃってどうすんだよ」 「うるせえ」 「うるさいって。……まぁ、マキは静か過ぎんだよ。寡黙なのがマキのウリなんだけどさあ」 「売った覚えはねえ」 「そういう意味じゃなくてさ」 「あのー……」 ぱっと二人がこちらを振り向く。 茶髪は目を輝かせて。 黒髪は面倒くさそうに、片眉をひそめて。 「名前、聞いてもいいですか」 このままじゃ、私の中で永遠に黒髪と茶髪になってしまう。
/662ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3159人が本棚に入れています
本棚に追加