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よほど驚いたのか、目を丸くしてこちらをガン見してくる。視線が痛い。
「何故って言われても。寡黙そうなのに、彼の話になると饒舌だから。きっと、優しい人なんだろうね」
「俺がか?」
ますますきょとんとする彼に、
「違う、彼の方」
込み上げる笑いを手で隠しながら、遥か先を行く茶髪を反対の手で指す。
二人ともなにしてんの。
僕三往復しちゃうよー。
当の本人はぶんぶん両手を振っている。既に生物室前に着いて退屈なご様子。
……可愛いかも。
「高校からの付き合いなんだが」
黒髪が歩き出すので、私は慌てて足を動かした。
「もっと長い付き合いに見える。何となく」
「そうか」
「私も父親はいないから、人前で明るく振舞う気持ちはよく分かる」
「……お前は母親と住んでんのか」
「母と、母方の祖父母と」
「そうか」
この人、可哀想という顔はしないんだ。
眉一つ動かさない黒髪の彼に、何だかほっとした。
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