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――ときに。デリカシーに欠ける人間は他人の快不快に鈍感だ。
わたしは相当訝しげな顔をしていたはずだが、駅員は、「よーう来たさね、緑川へ」とわたしに笑いかけ、続いて、「新造(しんぞう)さんもえらい楽しみにしとるなげさな、はよーう帰ったれ」と自分が引き止めておいたくせに母に諭す始末だった。
母はそんな田舎者の応対には慣れているのか、ええそうします、とまた曖昧に微笑んだ。
「店も閉めとるさけよぉっぽどあんたら帰ってくるん楽しみにしとるなげなぁ」
帽子を取り、禿げた汗まみれの頭を撫で上げて、またもがっははと笑う。
――なにが面白いのやら。
そして、祖父が店を閉めていることを何故この駅員が知っているのか。
得体の知れないむかむかが胃からせり上げる。
切り上げた母に従い、わたしは駅をあとにする。
振り返ってみれば、駅員はまだわたしたちを見ていた。
――父とは大違いだった。
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