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「謝らないで下さい。これでは 私が欲丸出しの 格好悪い男みたいじゃないですか……」
「だって、我慢してるんでしょ?」
「…それは そうなのですが…」
だよねぇ~
自分で『我慢してる』って言ったし…
──それに、
気付いちゃったんだけど…?
さっきから、太腿の辺りに当たってる硬いナニかを。
流石に そこまでは言わないけど…
やっぱり、申し訳無いでしょ……色々と。
コレがどういう状態か位は 知ってますから、一応。
まぁ、何回も謝るのは…それこそ松陰センセイの意に反する、って事も重々承知してるので、太腿に集まる意識を散らそうと態とらしく おどけて見せる。
「じゃあ、さ……その気が無いなら退けてくれる? 実は、さっきから耳が擽ったくて仕方無いんだよねぇ~。」
「…ッ!? そ、そうですね…!今直ぐ……うわぁッ!!」
「…ぐえぇッ!?」
慌てて退けようとした松陰センセイ…
慌て過ぎたらしい。
身体を起こした途端、畳に足を滑らせたのだろう。
見事、私の上にダイブ…
潰された格好の私の口からは 変な声が出る始末。
「あわわ…沙羅、大丈夫ですかぁッ!?」
「な、何とか…」
今度こそ起き上がってくれた松陰センセイは…心配そうな、申し訳無さそうな顔で 此方を見ている。
情け無いまでに下がった眉尻が、私から怒る気を削いでいく。
下がり過ぎでしょ…眉。
似てるわぁ…
その顔……わんこ、だよ。
「クゥゥン…」って鳴いて欲しいわぁ…
ダメだ、もう我慢出来ないよ…
「プッ…プハッ…あははは……!」
「へ? 沙羅…? 頭打ちましたか…?」
ムッ…!
「あはは……何、ソレ……っはは! 失礼、じゃ…ってか、ダメ!止まんないぃ~!あははは……!」
打ち所悪い、みたいな言われ方をして怒りたいのだが…
目の前の下がった眉が、ソレを許して貰えず笑いが止まらない。
「ハァ~…
君達は…いつ見ても飽きないねぇ…」
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