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突然、外野から聞こえた声に驚き、私達は 視線を声のした襖の方にずらす。
この声
この言い方
見なくても誰かなど、直ぐに予想が付く。
案の定、視界に捉えた人物に溜め息が漏れた。
「やぁ、久し振りだね。元気だったかい、沙羅?」
この人が来た、という事は…
何らかの藩命ってヤツが下りたのだろうか。
「ヅラ…」
彼は 長州藩の上役のハズ…
「うわぁ~、やっぱり その呼び方なんだ…」
相変わらず、真面目なのか不真面目なのか分からないヘラヘラした笑い顔が 鼻に付く。
「そんなに『ヅラ』が嫌なら…
……何時から其処にいた、この『エロ河童』!?」
「エ…エロ……?」
「全く、いつも君は 神出鬼没ですね。
一体、何の用があるのですか……『変態 覗き見 エロ河童』」
「ゴメンナサイ……『ヅラ』でお願いします。」
そう言って、肩を落とすヅラだったが…
思い出したかの様に顔を上げ、弁明を始める。
「そうじゃなくて!私は覗いてませんッ!!
声掛けようとしたら、松陰の間抜け声が聞こえたんで、急いで開けた途端……沙羅が松陰に潰された現場だったんだよ!」
ふぅーん、そうなんだ。
その前の遣り取りを 見られてなかったのなら一安心……
「……でも、その前から様子を窺(ウカガ)ってたのでしょ?」
「……………ハィ。」
じゃなかったぁ━━━━━ッ!!
バキッ…
「聞いてたのかぁ~!盗み聞きか、貴様ァァァ!!」
「ちょッ…痛ッ!?沙羅、ごめんって!そんなつもり無かったんだよぉ~。…只、邪魔しちゃ悪いかなぁ~、って……」
「其処へ直れェェェ~!」
「踵落としは止めてぇ~!頭割れちゃうから~!」
頭割れなくていいから、記憶なくしてくれッ!!
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