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プロローグ
ーー……何の変哲もない日常。
昨日と同じ今日があり、今日と同じ明日がある。
物語のような異能など存在しない
ーー筈だった。
しかし、数十年程前、 ‘‘異端者” と呼ばれる ‘‘異能” の力を持った人間が現れた。
ーー最初の異端者は、学者の男だった。
男は最初、自らに現れた異能の力に戸惑った。
だが、学者ゆえに未知の力を前にして探求心を抑えることは出来ず、研究を始めた。
研究を重ねるうちに、力は自らの欲求や、精神状態に深く関わることに気が付いた。
男は力がどこまで強くなるのか知りたかった。
自分の欲求がどこまで高まるのか、この力の限界を知りたかった。
男は麻薬に手を染め、狂気に呑まれ、ついには自らの力に食い尽くされた。
ただ、喰らい尽くされる間際に男は願った。
「まだ、私は研究したりない!
人の心理に、これ程強く、深く、密接な関わりを持つ力を前にして。
自らの精神が、力を持たないことがどれだけ口惜しいことか!
時間が足りない、身体が足りない、心が足りない、
ーー何より、研究対象が足りない!
私以外の人間にも、異能の力をーー……!」
死にゆく間際にそう叫ぶと、男の力は世界中に弾け飛んだ。
男の願いを、叶える為にーー……。
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