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元治元年(1864年)4月8日、京。
茶屋、おこし は今日も変わらずにぎわっていた。
ここは、抹茶が有名で近所の町人だけでなく、遠方からもたくさんの人
がやってくる。
小さな店ではあるが、味は確かだ。
甘いものに目がない、新撰組一番隊隊長沖田総司はうわさになっていた
茶屋で、抹茶の蕨もちを食べ一人店で座っていた。
「おいしい!さすがうわさになるだけはあるね!」
大の大人の男が茶屋で一人ニコニコと機嫌よく蕨もちを食べる姿は
浮いていたが、当の本人は全く気にしていなかった。
彼の両手に持たれているものは、おいしい蕨もちであるが、腰には物騒
なものが三本備わっていた。
この時代、武士なら誰でも持っている 刀 だ。
とてもやわらかい空気をまとっている彼であるが、戦いになると容赦な
く敵は倒されていく。
周りの人々はそんなことも知らず、ただ穏やかな時間だけが過ぎていた
「お前は新撰組の沖田総司だな」
見知らぬ男たちに声をかけられたのは、彼が蕨もちを食べ終え上機嫌
で店を出たすぐ後のことだった。
男たちは彼が、裏道に入りこむのをずっと待ち伏せていたのだ。
「いかにも。私は新撰組の沖田総司ですけど、みなさんそろってどう
されたんですか?」
彼は、男たちが何の目的で自分に近づいてきたのか分かっていながら
ふてぶてしい態度をとっていた。
笑顔の裏には狂気がかくされ、口元は笑っているものの視線は鋭い。
「恨むなら、自分のその強さを恨むんだな!」
先ほどまでの雰囲気とは打って変わり、男たちは一斉に彼に刀を向け向
かってきた。
「強さを恨む…ねえ」
彼は、動じることなく冷静に腰に備わっていた刀を抜いた。
「僕は今機嫌がいいんです。なので楽に逝かせてあげますよ」
男たちが刀を降り下げた刹那、彼の笑っていた口は閉じ、目は狂気に変
わった。
ほんの数秒の静寂、男たちは自分の足を支えることが出来なくなってい
た。
倒れた男たちからは、鮮血がドクドクと止め処なく溢れ続けた。
彼は、倒れた男たちを目の端に捉えながら、刀についた血液を掃った。
「恨むなら、自分のその弱さを恨むんですね」
彼のその瞳に優しさはなかった――――――
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