─誤算─ Act1.

3/11
前へ
/42ページ
次へ
返事の代わりに返ってきた視線は、どことなく恨みがましかった。 「だから、オレ一人でやるって言ったのに。 カメラさえ貸してくれれば」 「誰が商売道具を貸すかッ」 商売道具? カメラマンでもあるまいし。 「いーんだよ、 どーせボクは暇人だし。 誰かさんと違って」 ふてくされて鼻水をすする男は、名前を高木直史という。 高木は、同じ定時制高校に通った同級生だ。 当時は、教室の片隅でゴソゴソ機械いじりをしているようなヤツだった。 根暗に見えたその頃の面影は、今はない。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

194人が本棚に入れています
本棚に追加