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物心ついたばかりの頃だ。 庭に咲いた薔薇を乱暴に手折った僕は――。 その刺にひどく手を刺され 母に泣きついたことがあった。 母は愛おしげに 僕の手を撫でながら言った。 「敬ちゃん、お花は優しく扱わないといけないの。乱暴にしたら可哀相なのよ。それにあなただって悲しいでしょう」 僕は声を上げて泣いていた。 怪我が痛むわけじゃなくて 己の足元で無残に潰れた薔薇が 僕を責めているようで、悲しくて怖かった。 「ねえ、敬ちゃん。いつかあなたが大きくなって好きな子ができた時も、お花を扱うように扱うの。優しく優しく接するのよ」 母の言葉は トラウマを抱きかけた僕の胸に そのままストレートに突き刺さった。 それ以来僕は――。 「和樹――君の欲しい物はみんなあげる」 「和樹、君は何もしなくていい。僕に愛されていればそれでいいよ」 「僕は完全に君に恋したみたいだ。だから和樹――これからは何をおいても君が一番。約束する」 それ以来僕は こうなった――。
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