prologue

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「いえ、失礼。しばらくお目にかからないうちに、ますますお美しくなられたのでつい――」 「ありがとう。でも少なくとも、男に対する褒め言葉ではないね」 「いいえ。私たち美術品を取り扱う者にとっては『美しい』という言葉以上の賛辞はございません」 「まあ、そういうことにしておこう――どうぞ」 優雅に微笑んで 彼は勧められるままソファーに腰をおろした。 「先日届けてもらった物に、たまたま居合わせた拓海がコーヒーを零しちゃって。2度手間かけさせて悪かったね」 「いえ。お代は先日頂いた分で結構です」 小切手帳を取り出す僕を 彼はゆうるりと制した。
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