エクソスケルトンからパワードスーツへ

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   それは、ただ一機種の実戦配備から始まった。  米軍によるフィールド・エクソスケルトン、ヒューマン・ユニバーサル・ロード・キャリアー/HULC(要検索)の実用は、画期的な燃料電池の開発によって現実のものとなった。総重量80㎏を超える装備を搭載し、連続180時間の駆動が可能となったフィールド・エクソスケルトンは、これまでの小隊編成に変革をもたらした。  従来、小火器弾を使用するライトマシンガンを用いた分隊支援火器SAW(スクワッド・オートマチック・ウェポン)はより強力となり、12.7㎜機銃を歩兵単独で携行、運用しうることが可能となったのだ。これにより車両に頼った運用が基本であった重火器がより複雑な地形に持ち込まれ、容易に展開でき、歩兵小隊単位による打撃力が機械化小隊に準ずるほど強力となった。  通常戦闘におけるこの『重火力化』は、歩兵戦術を大きく変えることになる。これまで分隊支援であった弾幕兵器は制圧兵器となり、歩兵戦術の中核として機能するようになったのである。もちろんHULCの運用はハーグ陸戦条約に触れないよう、表向き『対物対車両機銃運搬機』と定義されていた。  紛争地域に投入された新戦術は、エクソスケルトン兵器を所持していない軍隊を圧倒し高い評価をもたらした。これは兵器産業および軍上層部を刺激し、さらなる重火力のエクソスケルトン兵器搭載を計画させるに至る。  いわゆる【パワードスーツ開発】の黎明である。
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