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そう、それがいけない。 分かりやすく発情した赤い唇に 可愛い舌先を這わせるなんて。 「ダメだ、その手には乗らない」 堪える僕の背後。 「失礼――食事の準備が整った」 レストルームの扉が開く音に思わず身をすくめた。 今になって思えば あのタイミングで 天宮征司が現れたのは――当然といえば当然だったと言える。 「九条さん――ご存知かな?家の屋敷にレストルームはひとつじゃない」 殺意を感じるほど冷たい声で わざわざ僕を呼びとめたのも。
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